
産廃の受入基準の決め方|受入不可品目の線引きと、断るときの伝え方
「これ、お宅で受けてもらえますか」
電話の向こうで、取引先の担当者がそう言う。品目は聞いた。量も聞いた。でも、答えが出てこない。
たぶん受けられる。いや、あの機械に入るサイズかどうか。契約書、あの品目入っていたっけ。ベテランの〇〇さんなら即答するんだろうけど、今日は現場に出ている。
——「確認して折り返します」と言って受話器を置いたあと、少し胃のあたりが重くなる。あの感じ、覚えがある方は多いと思います。
この迷いは、担当者の知識不足のせいではありません。受入の線引きが、どこにも書かれていないからです。書かれていないものは、毎回その場で考えるしかありません。それを毎日やっていたら、疲れて当然です。
今日は、その線を紙に移す話をします。
結論:受入基準は、次の4つの枠に分けて考えると整理できます。
1. 許可の枠——許可証に書かれた品目・事業の範囲。ここは動かせません
2. 契約の枠——委託契約書に書いた種類・数量・性状。取引先ごとに違います
3. 設備の枠——機械に入るサイズ、ヤードの容量、処理にかかる時間。自社の実力の線です
4. 方針の枠——リスクや手間を見て、会社として「受けない」と決める線
このうち 1と2は「断る」のではなく「受けられない」。外から決まっている線です。
3と4は自社で決めていい線。だからこそ、決めて書いておかないと毎回迷います。
そのうえで、「不可/条件付き可/要相談」の3段階にした1枚をつくり、電話を取る全員の手元に置く。断るときは「できません」で終わらせず、受けられる範囲を先に言う。これだけで、電話口の空気がずいぶん変わります。
1. なぜ、毎回その場で考えることになるのか
許可品目は許可証に書いてあります。委託した廃棄物の種類は契約書に書いてあります。ここまでは、探せば見つかります。
でも現場で判断が要るのは、たいていその先です。
- 同じ「廃プラスチック類」でも、土がべったり付いているものは受けられるのか
- 同じ「木くず」でも、釘が刺さったままのものはどうか
- 契約にある品目だけど、今週はヤードがいっぱいで置き場がない
- 量が1回きりの少量で、車を1台出すと採算が合わない
こういう線は、許可証にも契約書にも書いてありません。現場を長くやっている人の頭の中にだけあります。
だから、その人がいる日は即答できて、いない日は止まる。営業が「たぶんいけますよ」と先に返事をして、荷物が着いてから現場が困る。断ったあとで「前は受けてくれたのに」と言われる。
原因は人ではなく、線が共有されていないことのほうです。
2. 受入基準を、4つの枠に分けて考える

枠1:許可の枠(動かせない線)
いちばん外側の線です。自社の許可証に書かれた事業の範囲と取り扱う産業廃棄物の種類の外にあるものは、受けられません。
確認したいのは3か所です。
- 品目——相談された廃棄物が、許可品目に入っているか
- 限定条件——「〇〇に限る」「積替え保管を除く」といった条件が付いていないか
- 特別管理産業廃棄物かどうか——特管は通常の産廃許可とは別枠です
ここで大事なのは、これは「断る」ではないということです。会社の意思ではなく、行政が決めた枠の話。だから電話口でも、後ろめたく思う必要はありません。
許可証の読み方は 産廃許可証の見方|事業の範囲と「限定」条件、確認したい3か所、品目の区分は 産業廃棄物20種類の分類|現場で迷わない早見表 にまとめています。
枠2:契約の枠(取引先ごとに違う線)
許可品目に入っていても、その取引先との委託契約書に書いていない種類は、契約の外です。
委託契約書には、産業廃棄物の種類・数量・性状を書くことになっています。契約になかったものを受けてしまうと、契約書に書いた内容と、実際に流れているものが食い違った状態になります。あとで書類をそろえるとき、必ずここでつまずきます。
- 契約書の「産業廃棄物の種類」欄に、その品目があるか
- 性状に関する情報(WDSなど)と、実際の荷が合っているか
- 予定数量から大きく外れていないか
「今回だけ口頭で」は、いちばん後を引きます。継続して受けるなら、覚書などで契約側を先に直すほうが、結果的に早く済みます。
委託契約書の法定記載事項チェックリスト と WDS(廃棄物データシート)の作り方と渡すタイミング もあわせてどうぞ。
枠3:設備の枠(自社の実力の線)
ここから先は、自社で決めていい線です。そして、いちばん書かれていない線でもあります。
- サイズ——破砕機の投入口に入るか。長さ・厚みの上限は何cmか
- 量——ヤードや貯留ピットに、あと何日分置けるか
- 性状——含水率が高すぎて脱水に時間がかかりすぎないか。異物の混入率はどこまでか
- 荷姿——バラ、フレコン、ドラム、コンテナ。おろせる設備があるか
- 時間——受け入れてから処理までに、実際どれくらいかかるか
保管量には基準がありますから、「置けるかどうか」は感覚ではなく上限から逆算します(産廃の保管基準|高さ・囲い・掲示板を満たす積み方)。
枠4:方針の枠(会社として決める線)
最後は、法令でも設備でもなく、会社としてどう向き合うかの線です。
たとえばこんなものが並びます。
- 発火・破裂のおそれがあるもの——リチウムイオン電池入りの機器、中身の残ったスプレー缶・ボンベ
- 感染性のおそれがあるもの——梱包や表示が整っていない状態で持ち込まれるもの
- 混合の度合いが高すぎるもの——選別に人手がかかりすぎ、結果として採算も安全も崩れるもの
- 単発・少量で、車1台の運行と釣り合わないもの
これは「受ける力がない」のではなく、「受けない、と決めている」ものです。決めた理由を1行で書いておくと、電話口で説明しやすくなります。
発火まわりは リチウムイオン電池の混入と発火、スプレー缶・ガスボンベ混入の破裂を防ぐ受入確認 に詳しく書いています。
3. 受入不可品目リストを、1枚だけつくる
立派な規程は要りません。A4を1枚です。手順を小さく分けます。
手順1:断った案件を10件、思い出して書き出す
過去半年でいいので、「断った」「揉めた」「受けたけど大変だった」案件を挙げます。ひとりで思い出そうとせず、現場の人と営業に1問だけ聞くのが早いです。
「最近、受けて困ったやつって何かありました?」
たいてい、すぐ3つくらい出てきます。現場の人は、ちゃんと覚えています。
手順2:それぞれを4つの枠に仕分ける
書き出したものを、許可・契約・設備・方針のどれで引っかかったのかに分けます。ここで、自社の迷いがどの枠に集中しているかが見えます。
設備の枠ばかりなら、基準を数字で書けば解決します。方針の枠ばかりなら、会社として決めきれていないということです。
手順3:「不可/条件付き可/要相談」の3段階にする
ここがいちばん大事なところです。ゼロかイチにしない。
現場の実感としては、まるごとダメなものは意外と少なくて、多くは「条件しだい」です。3段階にしておくと、電話口で「条件付き可」の欄を見ながら、その場で条件を確認できるようになります。
| 区分 | 意味 | 電話口での動き |
|---|---|---|
| 不可 | 許可・契約の外、または方針として受けない | その場で「受けられない」と伝える |
| 条件付き可 | 条件を満たせば受けられる | 条件を読み上げて確認する |
| 要相談 | 判断に材料が要る | 確認事項を聞き取って折り返す |
手順4:条件付き可には、条件を1行で書く
「木くず:可」ではなく、こう書きます。
- 木くず:長さ1m以下・釘の除去済み・土砂の混入なし → 可
- 廃プラスチック類:土砂付着が目立つものは要相談。フレコン荷姿は事前連絡
- 汚泥:含水率の目安を超えるものは要相談(現物サンプルをお願いする)
数字と条件が入って初めて、判断が人から紙に移ります。
手順5:電話を取る全員の手元に置く
事務所の机、営業の車、現場の受付。同じ1枚を置きます。データだけにせず、紙で貼るのがおすすめです。電話中にファイルを探す時間はありません。
4. 断るときの伝え方
線が決まっても、伝えるところで気が重くなりますよね。仕事を断るのは、誰でも気持ちのいいものではありません。
伝え方は、次の3つを順番に置くと角が立ちにくくなります。
- 受けられる範囲を、先に言う
- 受けられない理由を、短く
- 代わりの道を、ひとつだけ添える
「できません」だけだと、相手には拒絶に聞こえます。同じ内容でも、受けられる側から話すと、相談の続きになります。
電話での言い方(例)
「ご相談ありがとうございます。○○については、当社の許可品目に入っていないので、当社ではお受けできないんです。
ただ、同じ現場から出る△△のほうは対応できますので、そちらだけ分けて出していただくことはできます。
○○のほうは、扱っている業者さんを何社か存じているので、よろしければお調べしてご連絡しますね。」
メールでの言い方(例)
件名:○○の受入について(ご回答)
いつもお世話になっております。
ご相談いただいた○○の件、社内で確認いたしました。
恐れ入りますが、○○は当社の許可の範囲外のため、当社でお受けすることができません。
あわせてご相談いただいた△△につきましては、これまでどおり対応が可能です。
○○の処理先について、心当たりをいくつかお調べできますので、必要でしたらお申しつけください。
引き続きよろしくお願いいたします。
「条件付き可」を伝えるときの言い方(例)
「そちらの品目、お受けできます。ひとつだけ確認させてください。
長さが1mを超えるものが混ざっていると、うちの機械に入らないんです。
現場で切っていただければそのまま受けられますので、そこだけお願いできますか。」
条件をお願いの形にすると、断りではなく段取りの相談になります。相手も動きやすくなります。
伝え方で気をつけたいこと
- 理由を担当者個人にしない——「私の判断で」ではなく「当社の受入基準では」と言う。基準表があると、これが自然に言えます
- 相手の出し方を責めない——分別が甘いのは、たいてい相手の現場も余裕がないからです
- 例外を口頭でつくらない——1回の「今回だけ特別に」は、次から基準になります。例外を出すなら、基準表のほうを直す
5. 現場で気をつけたいこと
営業と現場で、同じ1枚を見る。 受入基準がいちばん揺れるのは、営業が知らないまま約束してしまったときです。基準表ができたら、まず営業に渡してください。「断る材料」ではなく「その場で答えられる材料」として渡すと、受け取られ方が変わります。
年に1回、線を引き直す。 許可品目を追加した。機械を入れ替えた。契約を巻き直した。そのたびに線は動きます。更新のタイミングに合わせて見直すと、忘れません。
断った相談も、記録に残す。 「受けられませんでした」で消してしまうと、何も残りません。同じ相談が何度も来るなら、それは設備投資や許可品目追加を考える材料です。断った記録は、次の一手のデータでもあります。
「受けられなかった」ことを、失敗にしない。 枠の外のものを無理に受けたときのほうが、後の負担はずっと大きくなります。受けなかった判断も、会社を守る仕事です。
受入基準づくりのチェックリスト
- 自社の許可証を開いて、品目と限定条件を書き写した
- 特別管理産業廃棄物の扱いが自社の許可でどうなっているか確認した
- 主な取引先の委託契約書で「産業廃棄物の種類」欄を確認した
- 破砕機・投入口に入るサイズの上限を、数字で確認した
- ヤード・ピットの保管上限と、いまの残り容量を把握した
- 過去半年で断った・揉めた案件を10件書き出した
- それぞれを「許可/契約/設備/方針」のどれかに仕分けた
- 「不可/条件付き可/要相談」の3段階に分けた
- 条件付き可の品目に、条件を1行ずつ書いた
- A4・1枚にまとめて、電話を取る全員の手元に置いた
- 営業にも同じ1枚を渡して、内容を口頭で説明した
- 見直しの時期(年1回)を決めてカレンダーに入れた
明日やること
全部を一度にやらなくて大丈夫です。明日は手順1だけでいいと思います。
現場の人に、こう聞いてみてください。
「最近、受けて困ったやつって何かありました?」
出てきた3つをメモに書く。それが、あなたの会社の受入基準の1行目になります。
最後に

受入の可否を聞かれて答えに詰まるとき、責められているような気持ちになることがあります。相手を待たせている。会社の売上を逃すかもしれない。判断できない自分が頼りない。
でも、少し引いて見ると、あの数秒で迷っているのは、受けたあとに困る人のことを考えているからです。ヤードで荷ほどきする人。機械の前に立つ人。あとで書類をそろえる人。その顔が浮かぶから、すぐに「はい」と言えない。
それは、判断が遅いのではなくて、責任の範囲を広く見ているということだと思います。
線を紙に落とすのは、その優しさを毎回ひとりで背負わなくていいようにするためです。紙が断ってくれるなら、あなたは相手の相談に乗るほうに回れます。「うちではここまでできます」と言えるようになります。
まずは1行から。今日いちばん困った品目の名前を、メモの真ん中に書いてみてください。そこから始めれば十分です。
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